来年は行きたい日本の探鳥地 ~佐賀県・東よか干潟 春編~

大林 岳史(新浜探鳥会 担当)

前回のコラムでは「来年は行きたい日本の探鳥地」の第一弾として、佐賀県の東よか干潟の紹介した。ここからは、探鳥地での実際の観察の雰囲気をご紹介させて頂く。

 

シギ・チドリの飛来数ダントツの日本一

春の東よか干潟での確認種を求めて、鳥リストを探していたら、おあつらえ向きの情報があった。「是非このまま掲載を!」と使用を快諾頂いたので、引用させて頂く。 

2019年春 シギ・チドリ確認種

(東よか干潟及び周辺 ; 中村さやか様 作成)

 

何たる迫力!! 圧倒的な規模感!!

先ず触れるべきはこの圧倒的なスケール感。干潮時に干潟に行くと、遠くに散らばっていて見るだけでも一苦労だ。しかし満潮時には本当にあたり一面シギ・チドリだらけとなる。その規模はなんと1万羽。その数のシギ・チドリが、満潮時刻が近づくにつれて水際に横並びでひしめきあう様子は鳥肌モノ。その規模は日本一と言われる通り、おびただしい数を肌で実感できる。それこそハマシギ/トウネンは、一度に見られる数として、関東では数十羽、多くても数百羽前後の実感だが、東よか干潟ではひと群れ1000羽単位。「桁が違う」という表現がまさにぴったり。カラスが通過したりすると、その大きな群れが警戒して飛ぶのだが、ものすごい羽音と共に眼前で右往左往する姿はまさに圧巻!!

 

全部シギ・チドリ!!

日本一のシギ・チドリの探鳥地での楽しみ方

そんな沢山のシギチドリ類を眼前に何をしているのか?と思われるかもしれない。その一例をご紹介する。

 

① ひとかたまり1,000羽以上のハマシギ/トウネンの中から1羽のサルハマシギを探す。

 

この中にサルハマシギが1羽居ます!是非探して!!

図鑑や解説Webを開くと、サルハマシギは「シベリア北部で繁殖し、熱帯アフリカ、南アジア、オーストラリアで越冬。日本では数の少ない旅鳥として春と秋に通過」「繁殖羽の雄は東部から腹部にかけては濃い赤褐色」とある。日本への飛来はハマシギよりも数が少ない為、比較的珍しい種だ。そんな中で、「顔まで真っ赤なハマシギサイズのシギ」を望遠鏡で丹念に探していく。

回答はこちら!

② 群れで飛び交う大型シギを思う存分堪能

関東では一度に数羽レベルでしか見ることのできないダイシャクシギ、ホウロクシギなどの大型シギも、数百羽レベルで東よか干潟上空を飛び回る姿を確認できる。夕方にはチュウシャクシギが干潟にねぐら入りしてくる様子も確認できる。

 

上記以外の楽しみ方は下記の通り。やっている事が地味なあまり、まるで修行のようだが、決して誇張ではない。

  • メダイチドリとオオメダイチドリの違いをしっかりとアタマに叩き込む。
  • ひとかたまり500羽以上のトウネンの中からヨーロッパトウネンを探す。漂う欧州感に浸る。
  • 首を振るユニークな動作で採餌に燃えるオアシシギやコアオアシシギを愛でる。
  • 波間でボーっとしているように見える数十羽のオバシギやコオバシギを見て、関東との格差に愁う。関東では、コオバシギは1羽で大騒ぎ…。悲しい。

中型シギはハマシギの後ろの列に並ぶことが多い

 

 

感動の出会い ヘラシギ捜索成功(2019年春 )

そして、触れない訳にはいかないエピソード。正直、これを書くために、コラムを書いたようなものだ。シギ・チドリ愛好家ならずとも、そのユニークなくちばしが特徴的で人気なヘラシギ Spoon-billed Sandpiper。近年は生息環境である干潟の消失や狩猟の影響で現在約300羽にまで減少し、環境省レッドリストの絶滅危惧IA類に指定されている希少種。

 

そんなヘラシギを、計10,000羽のトウネンやハマシギの中から探すことは、この旅の大きな目的のうちのひとつ。2016年以来、東よか干潟でのヘラシギ飛来は確認できていなかったが、ついに2019年、2羽のヘラシギを発見することが出来た。結果的にこの年は、約20日間も確認されていたようで、観察するチャンスは沢山あり、大変良かった。

 

最前列の4羽のどれかがヘラシギ

起きたら近いところを走った為、晴れて激写!!

 

名言「佐賀はシギ・チドリの聖地だ!」

Shore Birderの東よか干潟や佐賀への愛の注ぎ方はハンパない。皆の気持ちは下記の番組に集約されているに違いない。佐賀はシギ・チドリの聖地だ!!仲間と現地でサガテレビのインタビューを受けたニュース映像を紹介。

 

 

 

最後に

 

如何だったでしょうか? 東よか干潟の魅力が伝わりましたでしょうか?

書き始めると、ご紹介したいことは山ほど思い出され、アレもコレもとなりますが、ご紹介したいことは山ほど思い出されますが、イメージは伝わったと信じています。今回は、春の東よか干潟にしか触れませんでしたが、秋の東よか干潟も楽しいですよ。秋編は追ってまたご紹介できればと思います。

 

当地には、「東よか干潟ビジターセンター(愛称:ひがさす)」という新しい施設が2020年10月に完成します。併せて訪れて頂ければと思います。来年は(今年の秋は?)佐賀へ絶対に行くぞ!!

 

 

【参考文献】

 ・榛葉 忠雄, 日本と北東アジアの野鳥, 生態科学出版株式会社, 2016, p246,247