ひとりヤン探やってみた ~多摩川狛江~

新橋 拓也(Young探鳥会 担当

前回の増田リーダーによる「ひとりヤン探やってみた~ふれあい松戸川~」に続き、予定されていた5月9日(土)高尾山ヤング探鳥会のリポートを投稿しようと思いたちました。しかし、緊急事態宣言にて外出の自粛が叫ばれているなか、安易に公共交通機関を使い、混雑している可能性もある高尾山へ行くというのは何とも気が引けます。

 

そこで今回は、私の自宅から徒歩圏内であり、昨年12月14日(土)のヤング探鳥会の開催地である「多摩川狛江」にて、ひとりヤング探鳥会をやってみることにしました。冬にご参加いただいた方には、季節の移り変わりによる鳥の変化を、そうでない方には身近なところでやる「おさんぽ鳥見」の参考として気軽に見ていただければと思います。

 

しかし、報道でも出ている通り、多摩川の河原にはあふれるたくさんの人。特にGW中は連日、ピクニックにいそしむ夫婦、スポーツで汗を流す夫婦、虫かごを手に闊歩する親子などの姿で埋め尽くされていました。

 

そこで選んだのは5月3日(月)11時半。予報より早かった雨上がりのタイミングです。人はまばら、気合の入った釣り人だけがちらほら河原へと現れるなか、ひとりヤング探鳥会を開始しました。

 

さて、今回の鳥見コースはこんな感じです。ヤング探鳥会と同じコースですね。

 

ここで簡単にフィールドの紹介をします。「多摩川狛江」は山梨の源流から始まり、東京神奈川を通り、東京湾に流れ込む多摩川の中流域エリアにあたります。コースの中心にあるのが「二ケ領宿河原堰」で、上流側は流れが緩やかな水面が広がります。下流には広い砂礫河原のなか、一部地層が露出している場所もあります。

 

この地層は、約130年前(前期更新世)の海成層で、体長5mを超える大型のジュゴンの仲間の化石等も発見されたことがあるそうです。(詳しくは「狛江 ステラーカイギュウ」から調べてみてください。)130万年前の地層を、現代に生きている我々が目にできるということにとてもロマンを感じます。こんなに面白いことを、狛江の探鳥会では紹介するのを忘れていたのでした。

 

前置きが長くなりましたが、最初のポイントである小田急線高架下の中州に到着しました。

  

「探鳥」というと「目で探す」イメージが先行しますが、特に繁殖期のこの季節には「耳で探す」だけでもいろいろな鳥の存在に気付くことができます。例えば、、、どこかでカイツブリが「キュェレレレレレ、、、(筆者ききなし)」と鳴いています。対岸の方からはオオヨシキリが「ギョギョシ ギョギョシ」とさえずるのが聞こえてきました。オオヨシキリについてはこの日が私の初認日でした。

 

空には、コアジサシが2羽「キリッキリッ」と鳴きながらヒラヒラ通り過ぎていきます。さらには十数羽のキアシシギの群れが「ピピピピ、、、」と旋回しながら下流のほうへと飛んでいきました。

 

こんな感じです。

 

この中でカイツブリは周年見られる留鳥ですが、オオヨシキリ、コアジサシはこのエリアで繁殖を行う夏鳥、キアシシギはここを通過して繁殖地へ向かう旅鳥です。鳴き声を覚えられると、鳥の姿を見ずとも季節を感じられるようになるので、とてもお得ですね。

 


ん~夏が来るねぇ。なんて噛みしめながら堰のほうに歩いていきます。ちなみに実際の天気は雨上がりの曇天、しかし気持ちよい晴れている感じを想像して読んでいただいても構いません。

 

堰から下流のエリアに到着です。

堰ではカワウが羽を乾かしていて、下流には砂礫河原が広がっており、目をよく凝らしてみるとコチドリ、イソシギ、キアシシギの姿を発見することができました。

 

コチドリはこの付近でヒナを見かけたことがあり、どこかで繁殖をしているようです。今年は河原で遊ぶ人がとても多いので、繁殖や子育てがうまくいくのかは心配なところです。

 

「チュビチュビ」という騒がしい声に気付いて上を見ると、多くの「ツバメとおぼしき鳥」が上空を飛び交っています。これをよく見ると、実はツバメ、イワツバメ、ヒメアマツバメの3種が混ぜこぜになって飛び交っているのでした。一緒くたに言ってしまいましたが、実はこの中で1種仲間はずれがいます。さぁだれでしょう??

 

 


、、、、簡単だったかと思いますが、答えは「ヒメアマツバメ」です。もう少し説明するとツバメ、イワツバメはスズメ目ツバメ科、ともに春に日本にやってきて繁殖する夏鳥で、東南アジアで越冬をします。

 

一方ヒメアマツバメはアマツバメ目アマツバメ科に属し、ツバメ目とは遺伝子的に近いというわけでもないようです。多摩川あたりでは、冬季に数が多く春夏には数が少ないのですが、冬場でも全く見られない日はしばしばという、わりかし神出鬼没な種です。このような系統の違う種にも関わらず、似た姿や生態に進化した現象のことを収斂進化と呼びます。身近な例をあげると、ほ乳類「イルカ」の仲間と魚類の「サメ」の仲間など。詳しい説明は興味があればグーグルにてご検索ください。笑

 

話は戻りこの3種(ツバメ、イワツバメ、ヒメアマツバメ)、似ているためによく観察しないと見分けがつきません。とりわけ、イワツバメとヒメアマツバメは、共通して腰の部分が白いことで、けっこう分かりづらいです。写真を撮ってみたのですが、動きが速すぎて全く歯が立ちません。笑

 

 

そこで苦し紛れながら、絵で2種を表現してみました。

 

決定的な違いは「おなかが白いかどうか」ですが、これが意外とよくわかりません。おなかを見せているときには、大抵逆光のため暗く見えてしまいます。そんなことから、イラストにしている通り、全体のシルエットから見分けてみることも試してみてください。ヒメアマツバメ、イワツバメともに、どこにでもいるわけではないので、3種を見分けてみたいということであれば、4~5月の多摩川沿いはおすすめです。

 

ツバメの観察もひと段落し、下流に向かって歩いていると、空の向こうからカラス大の鳥が数羽、騒がしくこちらに飛んできます。双眼鏡を構えよく見ると、オオタカがカラスに追いかけられているところでした。最近こちらでよく見かけるオスらしき成鳥です。

 

その後、オオタカはカラスから逃れ(追い出され)、上空を悠々と旋回しだしました。しばらくその姿に見とれていると、今度は突然オオタカがスピードを速めて急降下しました。「何が起きたんだ?」と思って双眼鏡を外して確認すると、オオタカと似た姿の鳥がもう一羽近くを飛んでいます。

 

再び双眼鏡越しに姿を確認すると、正体はハヤブサでした。オオタカとハヤブサが対峙する瞬間を目にできることはここでも少なくラッキーです。

 

オオタカとハヤブサ。この2種も、先ほどのイワツバメとヒメアツバメの例と同様に、系統的には近くないが「収斂進化」により似た姿、習性となっている仲間です。探鳥記を書く上でこの上ない都合のよさです。オオタカとハヤブサについてもカメラではうまく撮れなかったため、イラストにしてみました。

 

その後、下流に下り、ホオジロ、ヒヨドリ、カワセミ(声)などを見かけ、1時間ほど経ったので鳥見を終了としました。今回の「ひとりヤン探」で確認できたリストと、2019年12月に行ったヤング探鳥会でリストを照らし合わせてみました。

 

同じ場所でも季節やタイミングにより、観察できる種に大きく違いがあることが伝われば嬉しいです。これはどこの場所についても言えることなので、今後、皆様がお散歩がてら鳥見をしようという際にも、季節による差なども意識してみていただければと思います。

 

以上、拙い文章にお付き合いいただきありがとうございました。また、ヤング探鳥会や交流会等で皆様と一緒に鳥見できる日を楽しみにしております!

 

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