Covid Quarantine Birding冬編① チュウヒとジョウビタキ

平中 直也(葛西臨海公園探鳥会 担当)

Social distancing に気をつけながら、我が街豊洲にて。普段はあまり目を向けないような普通すぎる野鳥をシリーズで紹介していきます。COVID-19の感染拡大でまた外出自粛モードになりつつあるので、Covid Quarantine Birdingシリーズを時々書きます。今度は冬鳥編です。

 飛ぶ姿が最もかっこいい鳥は何?と聞かれたら、僕は迷わず「チュウヒ!」と答えます。

 

写真を見てください。これは葛西海浜公園の上空を飛ぶチュウヒなのですが、翼がV字型になりヨシ原の上を低空飛行していきます。

チュウヒは夏はユーラシア大陸北部で繁殖し、冬は越冬のために日本にやってきます。

 

英語名は「Eastern Marsh Harrier」(東洋の湿地に棲むチュウヒ)で、Harrier(ハリアー)はチュウヒのことです。戦闘機やトヨタ自動車の車の名前にもなっています。

 

飛翔がかっこいいチュウヒですが、実は絶滅危惧種。

生息地であるヨシ原や湿地で小動物・昆虫を捕まえて食べるのですが、ヨシ原の極端な減少によりその生存が脅かされています。関東地方でも観察できるエリアは限定的です。

 

そういう希少なチュウヒが大都会・東京のすぐ近くでビュンビュン飛んでるって、やはり葛西はすごいと思いません?機会があれば、ぜひ冬の葛西海浜公園でチュウヒを観察してみてください。カメラが趣味の方なら、「シンデレラ城を背景に」V字翼でかっこよく飛ぶチュウヒの写真を撮ることができますよ。さらに鳥どうしの「トビ vs チュウヒ」や「カラス vs チュウヒ」といった空中バトルも見ることもできます。そう、葛西海浜公園は鳥たちの異種格闘技戦の舞台でもあるのです。

 

とにかくかっこいい「V字翼」のチュウヒがが毎年越冬してくれるよう、大切な自然をずっと守っていきたいものです。

 



 

ジョウビタキは、その美しい姿から冬鳥で最も人気のある鳥の一つ。オスはジョビ男、メスはジョビ子と親しみを込めて呼んでる人が多いです。羽の白い紋の模様から「紋付袴の鳥」と呼ぶ人もいます。(写真はオス)

 

ジョウビタキの英語名はDaurian Redstart (ドーリアン・レッドスタート)です。Daurianはロシアの極東地方の名前(ダウリア地方)、Redstartはジョウビタキの仲間の事で「赤い尾」を意味します。startはtail(尾)の古い言い回しです。

 

日本語名の「尉鶲(じょうびたき)」は、オスの白い頭を老人の白髪に見立てて、翁を意味する尉(じょう)という文字を充てて「じょうのヒタキ」というのが由来のようです。

 

この美しい鳥はロシアで繁殖して越冬のために日本にやってきます。都市部の公園でも見つけることができます。最近では日本でも繁殖しているみたいで、僕の仲良しの友だちも今年の夏、信州で繁殖を確認しています。そしてこの鳥の特徴はなんと言っても「あまり人を怖がらない」こと。本当に近くまで来てくれる事があります。

 

写真のジョウビタキも、僕が池のほとりで物思いに耽っている時に、ふいに近くまで来てくれました。オスはビジュアルが派手ですが、メスはシックな模様。そしてお目々はメスの方が可愛い。

 

僕も人間のオスなので、ジョウビタキのオスには同情することがあるのですが、オスはメスが来ると追い払われてしまいます。メスの方が強いんです。男って悲しい存在ですねぇ。そういう"男の悲哀"をジョウビタキのオスに重ねて「頑張って生きるんだぞ」と心の中で呟きながら、詩でも創作してみようかと思う瞬間があったりするのです。



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